2011年07月06日

ICRPの決めた平常時の一般人の年間被ばく許容量は1mSv/年である。
(単純時間割りすると約0.11μSv/h)
これは、自然放射線に加えてで、一生その環境で過ごすことを前提とした数値である。
さらにもう一方で、ICRPは緊急時の被曝許容量を20〜100mSv/年としている。
緊急時=原発事故や核爆発を想定している。
今回の原発事故がこれに相当するが、100mSv/年の数値は成人の数値であるので、
子供たちにその一番下の値20mSv/年(平常時の20倍)をいつまで適用するかである。

日本は火山国であるから、所により自然に地中から放射性物質が噴き出るので、自然放射線だけでも1mSv/年は超える。
平常時でも0.2〜0.1μSv/hは計測される。
世界でも3mSv/年な地域はあちこちにある。

そういうわけで、簡易計測器で1mSv/年の時間割、0.11μSv/h以上が計測されたからといって自然放射線も含むので、一般人の年間許容の1mSv/年を超えるわけではない事は認識しておくべきだと思う。
東京の場合通常時が0.05μSv/hぐらいだから、0.15μSv/hまでは様子見という事になる。(もちろん少ないに越したことは無い)

一方で、電離放射線障害防止規則第6条第2号では、放射線作業従事者で妊娠している女性の被曝許容量は2mSv/年、妊娠可能な女性の被曝許容量は5mSv/3ヶ月となっている。
これは毎年そういう仕事に従事する

妊娠可能な女性の被曝許容量を適用するなら、5mSv/3ヶ月(避難までの期間)+残り1mSv/9ヶ月(避難)で6mSv/年ぐらいにするのが妥当なのではないだろうか。
これに自然放射線量をくわえ、児童は初年は8m〜10mSv/年、翌年は2mSv/年になるように努力するのが筋ではなかろうか。

そしてその3ヶ月は過ぎて4カ月目になろうとしている。


もう一つは内部被曝の暫定基準である。
こちらも緊急時の被曝量で、放射性ヨウ素50mSv/年、放射性セシウム5mSv/年を目安に、
食品を3つのカテゴリに分類し、それらの年間摂取量から算定した規制値である。
ミルクしかとらない乳幼児は3カテゴリではなく1カテゴリの食品だけになるので、水は大人300Bq、乳幼児はその3分の1の100Bqという基準値になった。
放射性ヨウ素は半減期が8日だから3ヶ月も経てば1000分の1以下に下がるので、毎日原発が爆発してる状態でなければ避難地域外で検出できる量は限られている。
だからすぐ小さくなるという前提で、でも正直乳幼児に放射性ヨウ素50mSv/年というのもキツイ値だという事は認識したほうが良い。
セシウムのほうであるが、暫定基準値ギリギリの食品だけ3ヶ月食べ続けた場合、妊娠可能な女性が3ヶ月間で許容されている被曝量の4分の1が内部被曝で満たされる。
4分の1でも、積算1.25mSvで、妊婦の年間許容の2mSv/年には残り0.75mSv/hしかないという、結構タイトな状態である。

特に、最初は成長の早い作物や、カリウムを多く含む葉物に多くセシウムが組み込まれやすい。
妊産婦は葉酸を多く摂取するようすすめられているため、どうしても葉物野菜の摂取が欠かせない。
暫定基準で長期間運用されると、電離放射線障害防止規則の2mSv/年を内部被曝だけで超える事になる。

暫定基準値はそういう性格のものだから、3ヶ月以上使用するものではないと思う。
外部被曝を自然放射線レベルに抑えても5ヶ月弱が限度である。

検査が追い付かず基準を超えて流通する可能性や、農家が自家栽培の野菜を自宅で食べる事を考慮に入れると、
大分出荷規制が落ち着いた今、基準値の見直しが必要だと思う。

少なくとも国は電離放射線障害防止規則にのっとった値にする義務があるだろう。


一方で、風評被害であるが、
農林水産省は牛肉のトレーサビリティーのように、オンラインや定期刊行物で、
各農協単位の食物出荷状況と検査結果をいつでもどこでも見る事が出来る体制を持つべきではなかろうか。
暫定基準値以下であれば良いという体制ではなく、非検出なのか、欧米通常時の基準内なのか、暫定基準内なのか、確認できる手段があったほうが良い。
今まで暫定基準の上限ギリギリだと思って手が出なかった人も、「非検出」(=計測限界)と確認出来る手段があれば買うという人もいる。
また、現在流通しているものが、昨年度収穫の在庫の作物もある。
都会人は収穫時期関係なく店頭に並ぶ環境に慣れ切ってるので、昨年度収穫の物さえ産地をみて拒絶という非常にもったいない事をしているのである。
風評被害を防ぐためには、産地を隠す、分からなくするのではなく、むしろ明示していく方向で取り組み、放射能が検出された地域は東電に被害請求と、除染への取り組みを真摯に取り組むべきである。

国が暫定基準という基準をいつまでも使い続ける限り、風評被害は消えない。
そして東電や国がが農業被害の即時支払いをしない限り、無理にでも流通側は出荷したがる。

経済が大事なのか、国民の健康が大事なのか。
国民の健康あってこその経済であること、国は忘れてはならない。

米の花が咲き実を結ぶ時期になる前に、土壌汚染と作物への影響度を調査し、必要に応じて農地除染するなど講じたほうが良いし、
妊婦・児童がいる家庭・給食には「不検出」の食品が優先的に手に入る仕組みを整備するべきだろう。

狭い日本、地道に表土を削り取ったり、成長の早い草を伸ばしては刈り取り別の場所へためておくをくりかして、耕作可能な国土を取り戻すしかない。
西日本の食糧生産量では首都圏の消費量は賄いきれないのだから。

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この記事へのコメント

1. Posted by tunmama   2011年07月06日 14:00
同意です。
とても参考になります。
ICRPのリスクモデルを良いように
解釈、利用、しかも内部被曝を考慮していない。
もう解除して良いですし限界だと思います。
食に関しても生産者側も消費者側も手を取り合って
克服していかないといけないですよね。

今後は、都や国に対して
食品の暫定基準値の撤回と
食品の放射線線量測定と表示。
子どもに対する安全基準の設置を要望する事を
会のプロジェクトとして進めていきます。
色々勉強させて下さい。

記事にして頂き
ありがとうございました。
2. Posted by おとみ   2011年07月07日 10:46
東京電力の女性職員は
>福島第一原子力発電所における当社職員の被ばく線量限度の超過について(続報)
平成23年5月1日東京電力株式会社
http://www.tepco.co.jp/cc/press/11050102-j.html
のように5mSv/3ヶ月で現場退去出来るのに、
女性子供含む一般市民は緊急時20mSv/年を許容してというのは変な理屈だと思いましたのです。

平常時の1mSv/年に固執して大騒ぎするのもあまりよくないのですが、
せめて5mSv/3ヶ月のラインは子供たちに適用して、福島や那須の子供たちを優先的に守れるように国は努力すべきなんですよ。

都市部の人は、コンクリートに囲まれてすぐ側溝に流され、外部から基準値より低い野菜があちこちから手に入るからまだいいのです。
農村の子は汚染された土に囲まれ、その土をつねに触って家で食べる野菜を育て食べてしまうので、基準値を超えて摂取している可能性が高く、同じ空間線量でも内部被曝度合いが違います。

チェルノブイリの子供たちも、情報が伝わりにくく土地からすぐ離れる事が出来ない農村部の子に発症が多いと聞きます。
本当に守るべきは、私たちの食糧を作ってくれる農家・漁師の跡取りとなる子供たちです。

東電女性社員より子供たちが軽んじられる事はあってはならないです。

行政に訴えるには、漠然とした不安で極論を訴えるのではなく、
こういった最低限の守るべきラインの根拠を示して訴える事です。

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