2011年07月29日

大学や仕事で色々測定器を扱ってた知見から独りごと。

ベクレルとシーベルトの関係の例えで、硬貨で例えてるサイトがある。
硬貨の数がベクレルで、金額がシーベルトになる。
単純明快な話である。
硬貨の種類によって1個が何円であるか決める係数が実効線量係数で、吸入した場合と経口摂取した場合、年齢によってこの係数は変わる。
為替レートみたいなものがあると思った方がいい。

この例えで行くと放射線測定器の種類で大きく分けて
お金の個数だけ数えるタイプと、
お金の総額だけ表示するタイプと、
お金を硬貨別に分けてカウントし額を表示するタイプの3つに分かれる。

お金の個数だけ数えるタイプは、いわゆるGM管のガイガーカウンターやSiPDでのカウンター、安いシンチレーションを用いたPDカウンターなどある。
これは例えば、1円が100個、5円が20個、10円が10個、50円が2個、100円が1個、どれも其々100円総計500円であるが、
1円玉ばかりの時は100個あるとカウントしてしまい、
100円玉は1個しかないとカウントする。
133個あるとカウントする。
これを金額換算するときには、133個という情報しかなくて、全部5円玉として計算してしまうと655円。
本来の金額より高く見積もられてしまうのだ。

一方金額だけ表示のタイプはシンチレーション式の測定器だが、シンチレーターにX線やγ線が当たると目に見える光となって光る。
これを目に見える光に感度が高いPDで光の強さを一定時間計測して、センサーに蓄積されたエネルギー量を数値で表示する。
先ほどのお金に例えると、何が何個入ったかは計測していないが、総額500円は出てくる。
さてこの総額から、じゃぁ100円玉は何個ある?という推定になったとき、単純に100で割って5個と出すと、実際含まれる1個より大きな数字が出てしまう。

測定器はこういうものをどうしているかというと、
1円玉、5円玉、10円玉の普段の存在比率をあらかじめ出しておいて差し引いてから計算する。
仮に1円玉=放射性カリウム、5円玉=放射性炭素、10円玉=放射性水素としてみよう。
(実際の存在比率やパワーは全く別です)
300円分は、普段から同じ比率で1円、5円、10円玉が入ってる。
500円から300円をひいて200円。それを100円でわったら2個になる。
まだまだ現実より多い。
でも、例えば50円玉=放射性ヨウ素とした時、もう放射性ヨウ素は殆ど存在しない状態であるときには有効なのである。
こういう原理で簡易なベクレルメーターというものは作ることが出来る。

カウンター方式の場合、
あらかじめ一定確率で存在する1円玉、5円玉、10円玉の個数130個を差し引けば、3個あるとカウントする。
シンチレーター方式より誤差が大きく出る所以である。
それが100円玉3個なのか50円玉3個なのか2:1なのか1:2なのか不明だが、放射性ヨウ素がいなくなれば正しくカウント出来る事になる。

実際にはもっとたくさんの種類があるので、それらの存在比率によって誤差は出るが、大雑把な数値と言うのはこういう仕組みで出せる。
このように測定するものを何かに限定すれば、通常の存在比率や量というのは過去の測定データからあらかじめわかるので、何かに特化した線量計やベクレルメーターというのは作成できる。
しかし、空気、土壌、食品の1円玉5円玉に相当する放射性カリウムや放射性炭素、放射性水素の存在比率は異なるので、
空間線量を測定する測定器で土壌や食品をいろいろ測ったところで誤差は大きく出るものと思った方がいい。

カウンター方式の誤差20%というのはこういう背景があって誤差が大きくなるし、
そもそも換算式がその地域の自然放射線分布にあってるかどうかでも精度が分かれるところである。

一方、核種別に測定できるスペクトロメーターというものは、両替機のように硬貨の種別ごとにカウントして金額も出すすぐれものである。
しかし、個々の額が分かるセンサーにあたるものが熱で誤作動を起こしやすいものなので、常に一定温度に冷却し、余計な放射線が迷い込んでこないよう周囲を遮蔽しなきゃならない。えらいごつい大きな機械になる。
微弱な放射線量の場合、測定の桁数を上げるには測定時間を10倍100倍とかけないと精度が出ない。
そういう関係で、屋外に持ち出してその辺測るというのはなかなか難しい機械でもある。
しかも100万以上するもんである。

可視光の場合や波長の長いX線なら回折格子や結晶で光線の進む方向を波長によって曲げてセンサーで感知する事は可能だけれども、
γ線は原子サイズの波長なのでもはや波の性質で進行を制御するのは出来ないので、
高周波数→エネルギーが高いという性質を利用して、検出したγ線のエネルギー強度で振り分けてカウントするという方法で核種特定と計測を行う。
両替機に例えると、重さや大きさで振り分けてカウントして金額表示するという形である。

もちろん偽造硬貨やすり減った硬貨が混入すれば間違うように、センサーの感度によっては性質が似ているものは分離しきれない事もある。
シリコンのセンサーだと例えば1円と5円の区別がつかないで10円単位でしかカウントできなかったりする。
ゲルマニウムは1円と5円の区別も他国の硬貨も振り分けるタイプであると思った方がいい。

ただ万能に見えるスペクトロメーターも欠点があって、γ線を出さない核種は測定しにくい。
β線しか出さないストロンチウムの測定結果が、ヨウ素やセシウムと一緒に出てこないのはこのためである。
政府は決して隠蔽してるわけではない。本当に同時に測れない。
α線しか出さないプルトニウムも同様である。
γ線を出さないものは面倒な下処理をして測定しなくてはならないので、1週間単位で時間が必要になり全品検査は出来ない。
緊急時における食品の放射能測定マニュアル@平成14年3月
厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課(PDF)


さて話題のエステーの測定機エアカウンターであるが、SiPDを用いたカウンター式。
PDにβ線が直撃するとダイオードの構造が破壊されてしまうので寿命が短くなるのでβ線カットしてる。
その名の通り空間線量測定用で放射性セシウムに特化したテーブルで線量を表示するので、推奨環境以外では、本来の線量より高い値が出ると思う。
また、その値段、SiPDの感度から、高温の場所に放置して測定すると誤差が多くなるだろうと思う。
そういう性質のものであるという理解で使う事が必要だと思う。

今は放射性ヨウ素が大分落ち着いているので、PETシンチレーターが搭載された測定器で測定対象物ごとにチャンネルを作って、簡易ベクレル表示する測定器が1万円台で出来れば、生産者流通業者側に置いて簡易計測出来るんではないかと思う。
何でも0Bq/kgの人は1時間かけて測定すればいいし、10Bq/kg以下なら10分弱、100Bq/kg以下なら1分ぐらいで上か下かぐらい分かるだろう。
暫定基準こえかどうかなんて1分ぐらいで大体何らかの値は出るのだし。
そうやって測定精度を使い分けてトリアージしていくことも大事だと思う。
2000万円の1台を買うより2万円のを1千台用意して、高いのと低いのを分ける作業は必要だと思う。
不検出を売りにしたいものだけ冷蔵庫中で1週間寝かせている間に測定出来る機械を用意して、確認すればよいと思う。
そういう食品検査に特化した測定器というものは必要だと思う。

風邪ひくたびにフル装備の血液検査する馬鹿はいないだろう。
季節や症状によってインフルエンザ用、アデノウイルス用、結核用、肺炎用などの検査キットで検査するもんだ。


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