2011年10月05日

「給食の放射能調査」は妥当か?

計測をやってる人の暗黙の了解として、1.0を正確に識別したいと思ったら0.1を正確に出せる測定器でないと、値に信憑性がないとして切り捨てられる。

1Bq(ベクレル)は1秒間に1個、放射性物質が崩壊する単位だ。
1Bq/kgは1キログラム中に1秒間に1個放射性物質が崩壊するという意味で、100gだけしかサンプルがないと0.1個しか崩壊しないという事になる。
シュレディンガーの猫のように実際0.1個崩壊するという事は無い。
10秒待って1個崩壊するという事になるが、あくまで確率なので、10秒以内に1個壊れるかどうかは分からない。
10秒崩壊がなく次の10〜20秒の間に2個崩壊することもあれば、90秒崩壊が無く残り10秒で崩壊が10個あることもある。
100gのサンプルで1Bq/kg未満かどうか判別するためには、理屈上100〜1000秒は測定しなければいけない。


以降の計算で桁間違えがあったらごめん。

そしてセシウム137の原子1個が放つγ線のエネルギーであるが、
0.662MeV≒0.1pJである。p(ピコ)は10e-12=0.000000000001。
J/kg=Gy≒Svなので、1Bq/kg≒0.1pSv/s=360pSv/h=0.36nSv/h=0.00036μSv/h
そういうレベルのものを検知してカウントするわけである。
(しかもγ線がセンサーに向かって飛ぶとは限らない)

ちなみに空間線量は一番低い盛岡でも0.024μSv/hある。
バックグラウンドのラインに対して100分の1の値の変化を見つけるわけだから、1Bq/kgかどうかはかなり安定した環境でないと計測できない。
周りのサンプルからもγ線は飛んでくるので、遮蔽板に囲まれた容器内で測らないとこの僅かな差は計測できない。

空間線量計や表面測定器のスペックをみると、測定範囲を0.001〜99.999μSv/hと丁寧に書いてるのもあれば、0.00〜99.99と書いてあるものがある。
後者は決して0まで測れるわけではなく、せいぜい0.005までは識別して0.00か0.01と表示するという意味合い。
そういう精度の機械では50Bq/kg以上の測定値しか信用性が無く、500Bqの上か下かしか正しく識別できないと思う。
0.001Sv/h〜の測定器で50Bqの上か下かを正しく判別出来る。
そういった測定器と同じセンサーで1Bq/kgの上か下かを測定しようとしたら、厳密に言うと最低でも1000倍の時間をかけないといけない。
安定するまで1分かかる測定器ならば、60000秒=17時間程度かかる。
10分程度の測定では50Bq/kg超えてないという判断には使えるが、1Bq未満の証明には1000万以上の機械を使うか丸一日測定するかになる。
大体は100万円台の測定器で10分測定、50Bq/kg以下は30%の誤差として5Bq/kg未満は保障してないと思う。

給食で1Bq/kgでも出たら弁当を持たせるという人もいるが、
毎日出す給食で1Bq/kgを正確に出す測定をするなら毎日1000万円の測定器で1品につき1時間測定という、非現実的な体制を取らなくてはならない。

さて、某地域がウクライナ並みの給食基準を置いたが、
ハンディな表面計測(0.00μSv/h〜)で、周りに食材がゴロゴロ置いてある環境下で1分表面に当てた程度で40Bq/kg未満かどうかの判別など正確に出来るのだろうか?
測定機関係者ならそれはNoと答えると思う。
モニタに数値は出るけどもそれは不確かなものとなる。
誤検出で使える食材を捨ててしまったり、あるいは使えないはずの食材を使うという事になる。

基準を決めるには、それに見合った検査体制を持たなければ意味が無い。

50Bq→1Bqにするコスト(測定器+人件費+保守料金と時間、それに対抗する母親の弁当作成にかける労力)を考えたら、
定期的に子どもの生活環境を除染したほうが総被曝量が下がり効率が良い。
安全でなく安心を得るだけの経費ならば、尿検査を実施して現在の被曝量と食生活や事故後の行動の調査をして、どのレベルまで対策したら西日本の子と変わらなくなるのか、30年前の親の世代変わらないレベルは何処なのか、データを出したほうが良いのではないかと思う。

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