2011年10月18日
緊急時における食品の放射能測定マニュアル
平成14年3月厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課
ぶっちゃけるとこういう内容。
緊急時のヨウ素131の測定
とりあえず緊急なんで、一々スペクトロメーターで測ってる時間がないので、シンチレーション測定器で出た放射線量をヨウ素の係数で割って出す。
(カリウムやセシウムが入っても全部ヨウ素換算で出すので値は全て高めに出る)
2Lの専用容器に牛乳や野菜を突っ込んで、そこにセンサーを入れて測定。
牛乳で100Bq/L、葉菜等で1000Bq/kgのスクリーニングが可能。
ヨウ素は半減期8日なので、測定器を準備してる間に本当にスクリーニングが必要な時期を過ぎてしまうので、手元にある測定器でとりあえず対応する場合の方法。
測定体制が揃った時のヨウ素・セシウム測定
ヨウ素が落ち着いた段階でスペクトロメーターで測る。
測定時間、測定重量と定量可能レベルの表を見れば分かるが、10分ソコソコの測定で例えば牛乳サンプル2Lで40Bq/L以下の精度は信用できない。
これ以下の重量や、計測時間ですると、信頼できる値というのは、この数値に掛け算しなきゃならない。
100ccで10分しか入れてないのなら800Bq/L以下の数値は誤差が大きくなり信用できないという事。
0.1Bq以下じゃないと駄目なんて言っていたら、2L入る測定器で20時間測定が必要になる。
民間の検査機関でサンプル500g10分の測定で20Bqなんて本当は出せない。±20の誤差があったら、本当は0Bqかもしれないし、40Bqかもしれない。2%の確率で80Bqかもしれない。そういう値。

100gくらいのサンプル持ち込んで10分の測定でウクライナ基準を判別できる精度なんて本来出せない。
ウクライナでそういう測定方法を許容しているという事は、そうでもしないと生活できないということ。
そういう簡易測定で基準を超える作物が今でも良く出るという事を意味する。
α核種、β核種の測り方
γ線を出す物質はγ線の波長=エネルギーの強さでより分けることで、どの核種からのγ線が特定出来るし、物質を突き抜けるので特殊な前処理がなくても測定できるけど、
α線はヘリウム粒子、β線は電子粒子。核種により飛び出す速度は違うけど、物があると電場や引力に引っ張られて減速してしまうので、α粒子、β粒子を検出することは出来てもそれがどの物質から飛んできたものか特定することが出来なくなる。
なので、物質を化学的に分離して測定する方法がとられる。
速報値で全α核種、全β核種の数値が出ても、個々の値がなかなか出ないのは、こういった化学処理が必要だから。
ガスクロマトなど化学的な分析でとりあえず放射性非放射性もひっくるめた形で成分を割り出してから、検出された物質に合わせた化学処理をして抽出し、シンチレーションでβ線やα線の数をカウントするなどの方法がとられる。
γ線スペクトロメーターは1日講習を受ければ何となく使えるけど、α線β線の検出については相当の設備と化学分析のスキルが要るし、高濃度放射性サンプルの場合放射線の講習を受けた人しか扱えない場合もあるので、作業出来る人が限られるという現状がある。
プルトニウムの測り方。
サンプルの水分を抜いて電子レンジで灰にする。
硝酸で溶かして、電子レンジ→冷却→亜硝酸ナトリウムを加えるを繰り返す。
ろ過した液に薬液を加えウランやトリウムを除去してプルトニウムだけにしてα粒子測定。
ストロンチウムの測り方
サンプルの水分を抜いて灰にする。
サンプルの灰1gにイットリウムとストロンチウムを10mgずつ加え、王水で溶かして水分を飛ばしてから塩酸で溶かす。
ろ過して不純物を除いた後に、薬液を加えて混ぜた後上澄みを除く。
底に残ったものに塩酸を加え混ぜた後上澄みを除く
また塩酸を加え、今度は上澄みと堆積物に分ける作業を繰り返し上澄み液をためる。
上澄み液にトルエンをくわえて、その上澄みにアンモニア水を加えてイットリウムを沈殿させろ過する。
沈殿物に塩酸に溶かし、シュウ酸を混ぜアンモニア水でpH調整してイットリウムを沈殿させてろ過する。
沈殿物を塩酸に溶かして水を加えてようやく前処理完了。
という作業が要るわけで。
ストロンチウム測定がセシウムみたいにミキサーにかけてオカマでポン状態で測れないことを理解いただきたい。
100サンプルなんて届いただけでも間違えずに管理するだけでも泣きたくなる状態。
高濃度汚染土壌を大量に持ち込まれたら、それらのサンプルに囲まれて作業するわけで。
容器、実験器具は全て使い捨て、廃液も放射性廃棄物となり管理が大変。
プルトニウムの値がストロンチウムより早く公表される理由はこの手間の差。
隠してるわけでなく、この作業が出来る人が限られていて、サンプル山積み状態。
他のγ線を出さない核種についても似たような分離作業をしてからの測定となる。
今、すぐ大体の量を知りたい時は、代表サンプルのセシウム:ストロンチウム比を把握しておいて、セシウム量からストロンチウム量を推定するというのが実用的な方法。
チェルノブイリの場合はセシウム:ストロンチウム比は10:1という状態でストロンチウムの規制も敷かれたのだが、福島原発事故の場合陸上は100:1程度と事故直後の土壌調査で出ていたので、セシウム測定が優先された。
海洋の場合は汚染水のストロンチウム比率が高いので、迅速な代表サンプル調査が必要になる。
ストロンチウムを吸着しやすい海草、骨ごと食べる小魚、身だけ食べる大型魚、産廃を使う魚肥料をサンプリングする必要がある。
最近市民測定所やベンチャー企業が測定器を購入して起業するのが相次いでいるが、
基本知識を持たないまま測定器を扱うので、間違った値が独り歩きをして余計混乱を招くことがある。
たとえば、本来、消費者が望んでいるような低濃度のサンプルの安全確認の場合、外部の放射線遮蔽をしっかりしないと駄目だ。
剥き出しでスクリーニング用の機器を当てただけでは100Bq以下の食品なんて測れないし、ましてや20Bq以下かどうかなんて測れない。
高線量地帯で軽量鉄骨のテナントに測定器を置いただけだと外部の放射線が入って来る。
測定器のセンサーは熱の影響を受けやすいから、窓から陽がさんさんと入る環境とかもあり得ないし。
微量の放射線測定は大体厚いコンクリートに囲まれた地下室で行うもんだ。
人間自体も放射線を出してるのだから、測定中は測定器から離れてた方が良いのだし。
蛍光灯もUVカットフィルターなどをかけて、可能な限りノイズを抑えるもの。
測ってる脇でネットカフェみたいに茶を飲んでるとか電波飛ばす携帯弄ってるとか、とんでもない環境で微量放射線の測定をしようとしてるのだ。
そこで値が出てパニックになってる。
安心を得るためにやってることが余計不安を得る結果となる。
理系人間が少ない母親団体は、そういう理屈をすっ飛ばして自分の不安に同意してくれる団体を妄信的に傾倒する傾向があり、誤ったやり方で余計不安を増やすことが多い。
ましてや自身の考えに共感せず反論する人を感情的に排斥してしまう傾向もあったりするので、時として誤った方向に暴走していく。
放射線から子どもを守る団体の多くが、反核団体の出す超危険派情報に振り回されて要らぬ努力までする、そういうのを見てるとなんか不憫。
平成14年3月厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課
ぶっちゃけるとこういう内容。
緊急時のヨウ素131の測定
とりあえず緊急なんで、一々スペクトロメーターで測ってる時間がないので、シンチレーション測定器で出た放射線量をヨウ素の係数で割って出す。
(カリウムやセシウムが入っても全部ヨウ素換算で出すので値は全て高めに出る)
2Lの専用容器に牛乳や野菜を突っ込んで、そこにセンサーを入れて測定。
牛乳で100Bq/L、葉菜等で1000Bq/kgのスクリーニングが可能。
ヨウ素は半減期8日なので、測定器を準備してる間に本当にスクリーニングが必要な時期を過ぎてしまうので、手元にある測定器でとりあえず対応する場合の方法。
測定体制が揃った時のヨウ素・セシウム測定
ヨウ素が落ち着いた段階でスペクトロメーターで測る。
測定時間、測定重量と定量可能レベルの表を見れば分かるが、10分ソコソコの測定で例えば牛乳サンプル2Lで40Bq/L以下の精度は信用できない。
これ以下の重量や、計測時間ですると、信頼できる値というのは、この数値に掛け算しなきゃならない。
100ccで10分しか入れてないのなら800Bq/L以下の数値は誤差が大きくなり信用できないという事。
0.1Bq以下じゃないと駄目なんて言っていたら、2L入る測定器で20時間測定が必要になる。
民間の検査機関でサンプル500g10分の測定で20Bqなんて本当は出せない。±20の誤差があったら、本当は0Bqかもしれないし、40Bqかもしれない。2%の確率で80Bqかもしれない。そういう値。

100gくらいのサンプル持ち込んで10分の測定でウクライナ基準を判別できる精度なんて本来出せない。
ウクライナでそういう測定方法を許容しているという事は、そうでもしないと生活できないということ。
そういう簡易測定で基準を超える作物が今でも良く出るという事を意味する。
α核種、β核種の測り方
γ線を出す物質はγ線の波長=エネルギーの強さでより分けることで、どの核種からのγ線が特定出来るし、物質を突き抜けるので特殊な前処理がなくても測定できるけど、
α線はヘリウム粒子、β線は電子粒子。核種により飛び出す速度は違うけど、物があると電場や引力に引っ張られて減速してしまうので、α粒子、β粒子を検出することは出来てもそれがどの物質から飛んできたものか特定することが出来なくなる。
なので、物質を化学的に分離して測定する方法がとられる。
速報値で全α核種、全β核種の数値が出ても、個々の値がなかなか出ないのは、こういった化学処理が必要だから。
ガスクロマトなど化学的な分析でとりあえず放射性非放射性もひっくるめた形で成分を割り出してから、検出された物質に合わせた化学処理をして抽出し、シンチレーションでβ線やα線の数をカウントするなどの方法がとられる。
γ線スペクトロメーターは1日講習を受ければ何となく使えるけど、α線β線の検出については相当の設備と化学分析のスキルが要るし、高濃度放射性サンプルの場合放射線の講習を受けた人しか扱えない場合もあるので、作業出来る人が限られるという現状がある。
プルトニウムの測り方。
サンプルの水分を抜いて電子レンジで灰にする。
硝酸で溶かして、電子レンジ→冷却→亜硝酸ナトリウムを加えるを繰り返す。
ろ過した液に薬液を加えウランやトリウムを除去してプルトニウムだけにしてα粒子測定。
ストロンチウムの測り方
サンプルの水分を抜いて灰にする。
サンプルの灰1gにイットリウムとストロンチウムを10mgずつ加え、王水で溶かして水分を飛ばしてから塩酸で溶かす。
ろ過して不純物を除いた後に、薬液を加えて混ぜた後上澄みを除く。
底に残ったものに塩酸を加え混ぜた後上澄みを除く
また塩酸を加え、今度は上澄みと堆積物に分ける作業を繰り返し上澄み液をためる。
上澄み液にトルエンをくわえて、その上澄みにアンモニア水を加えてイットリウムを沈殿させろ過する。
沈殿物に塩酸に溶かし、シュウ酸を混ぜアンモニア水でpH調整してイットリウムを沈殿させてろ過する。
沈殿物を塩酸に溶かして水を加えてようやく前処理完了。
という作業が要るわけで。
ストロンチウム測定がセシウムみたいにミキサーにかけてオカマでポン状態で測れないことを理解いただきたい。
100サンプルなんて届いただけでも間違えずに管理するだけでも泣きたくなる状態。
高濃度汚染土壌を大量に持ち込まれたら、それらのサンプルに囲まれて作業するわけで。
容器、実験器具は全て使い捨て、廃液も放射性廃棄物となり管理が大変。
プルトニウムの値がストロンチウムより早く公表される理由はこの手間の差。
隠してるわけでなく、この作業が出来る人が限られていて、サンプル山積み状態。
他のγ線を出さない核種についても似たような分離作業をしてからの測定となる。
今、すぐ大体の量を知りたい時は、代表サンプルのセシウム:ストロンチウム比を把握しておいて、セシウム量からストロンチウム量を推定するというのが実用的な方法。
チェルノブイリの場合はセシウム:ストロンチウム比は10:1という状態でストロンチウムの規制も敷かれたのだが、福島原発事故の場合陸上は100:1程度と事故直後の土壌調査で出ていたので、セシウム測定が優先された。
海洋の場合は汚染水のストロンチウム比率が高いので、迅速な代表サンプル調査が必要になる。
ストロンチウムを吸着しやすい海草、骨ごと食べる小魚、身だけ食べる大型魚、産廃を使う魚肥料をサンプリングする必要がある。
最近市民測定所やベンチャー企業が測定器を購入して起業するのが相次いでいるが、
基本知識を持たないまま測定器を扱うので、間違った値が独り歩きをして余計混乱を招くことがある。
たとえば、本来、消費者が望んでいるような低濃度のサンプルの安全確認の場合、外部の放射線遮蔽をしっかりしないと駄目だ。
剥き出しでスクリーニング用の機器を当てただけでは100Bq以下の食品なんて測れないし、ましてや20Bq以下かどうかなんて測れない。
高線量地帯で軽量鉄骨のテナントに測定器を置いただけだと外部の放射線が入って来る。
測定器のセンサーは熱の影響を受けやすいから、窓から陽がさんさんと入る環境とかもあり得ないし。
微量の放射線測定は大体厚いコンクリートに囲まれた地下室で行うもんだ。
人間自体も放射線を出してるのだから、測定中は測定器から離れてた方が良いのだし。
蛍光灯もUVカットフィルターなどをかけて、可能な限りノイズを抑えるもの。
測ってる脇でネットカフェみたいに茶を飲んでるとか電波飛ばす携帯弄ってるとか、とんでもない環境で微量放射線の測定をしようとしてるのだ。
そこで値が出てパニックになってる。
安心を得るためにやってることが余計不安を得る結果となる。
理系人間が少ない母親団体は、そういう理屈をすっ飛ばして自分の不安に同意してくれる団体を妄信的に傾倒する傾向があり、誤ったやり方で余計不安を増やすことが多い。
ましてや自身の考えに共感せず反論する人を感情的に排斥してしまう傾向もあったりするので、時として誤った方向に暴走していく。
放射線から子どもを守る団体の多くが、反核団体の出す超危険派情報に振り回されて要らぬ努力までする、そういうのを見てるとなんか不憫。
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この記事へのコメント
1. Posted by パンチです 2011年10月23日 12:59
拝読いたしました・・!
一口に測定といっても・・ほんとに大変な作業ですね。時間も手間も・・。それにでてきた測定値を読み解くことは、それ専門の方でないと。。数字のもつ意味をちゃんと理解できるようにならなければですね。
ほんとに大変な時代になったものだとつくづく思います。
おとみさんてどんなお仕事されているのかしら、なんてふと思いました。
理数がだめな私なので、読んでいて「す〜ご〜い〜☆」と感心しきりです。
(^−^;)
そんな私ですが、3人目の子どもを妊娠。まぁ心配してもきりないのでね、前向きに妊婦生活やっていこうと思います☆
一口に測定といっても・・ほんとに大変な作業ですね。時間も手間も・・。それにでてきた測定値を読み解くことは、それ専門の方でないと。。数字のもつ意味をちゃんと理解できるようにならなければですね。
ほんとに大変な時代になったものだとつくづく思います。
おとみさんてどんなお仕事されているのかしら、なんてふと思いました。
理数がだめな私なので、読んでいて「す〜ご〜い〜☆」と感心しきりです。
(^−^;)
そんな私ですが、3人目の子どもを妊娠。まぁ心配してもきりないのでね、前向きに妊婦生活やっていこうと思います☆
2. Posted by おとみ 2011年10月24日 14:46
> おとみさんてどんなお仕事されているのかしら、なんてふと思いました。
大学では光工学主体の画像計測。
でも学部の関係で化学実験も必須で、光の延長でγ線習ったり、素材の一つで放射性物質も触れる人がいたりで、最低ラインの知識はある状態。
そしてなぜか放医研のバイト経験あり。
でもいまはしがない一企業で安月給でシステム開発とかサンプルの色彩測定分析とか。
たまに新人講習とか。技術営業とか。ビジネスショーの説明員とか。
金が無いから博士通えなかった、今でも奨学金返済人。
大学では光工学主体の画像計測。
でも学部の関係で化学実験も必須で、光の延長でγ線習ったり、素材の一つで放射性物質も触れる人がいたりで、最低ラインの知識はある状態。
そしてなぜか放医研のバイト経験あり。
でもいまはしがない一企業で安月給でシステム開発とかサンプルの色彩測定分析とか。
たまに新人講習とか。技術営業とか。ビジネスショーの説明員とか。
金が無いから博士通えなかった、今でも奨学金返済人。